全国の市町村で回遊型ひな祭りイベントが開かれている昨今。
自分はこれまでいくつかの町を訪れてきたが、茨城県では多くの地域でイベントが催されていた。24件もあったとは…一つも行ったことがなかった。ひな祭り好きとして不覚
開催地の中で特に気になったのが土浦だ。れんこん人形…れんこんどら焼き…れんこんキーホルダー…自分の知らないれんこん文化。れんこんが根付く町のひな祭り、見てみたい。
※当ブログはひな祭りを通して町人とふれ合おうとするもので、人形について詳しくありません
今回は「土浦の雛まつり」に決めた。平成最後のひな祭りだ。
初めて土浦に来た
駅に〝土浦市の自慢!〟が掲げられていて、れんこん畑の写真を背景に名物がレイアウトされている。左から、れんこんキャラクター・蓮の花・花火・霞ヶ浦・桜・れんこん
土曜の午前10時半、ホームに降り立つと写真を撮る人々が目に入った。皆ひな祭りを見に来たのかと、自分も撮ろうとしたら看板にイラストが描かれている
土浦はアニメにまつわる町らしい
駅の観光案内で雛まつりマップをもらい、多数の人形スポットの中から特に見るべき場所を教わった。ここにも人形が飾られていて、土浦雛まつり巡りの第1ポイントとなった
①「土浦市観光案内所」
マップに載る「れんこんセンター」が気になるけれど駅近くからのぞいて行こう。
都内で馴染みある駅ビル「アトレ」ができるんだなと思ったら、よくあるファッションビルでなく〝日本最大級のサイクリングリゾート〟となるらしい
土浦は自転車の町らしい
駅前の広いロータリーと市役所や図書館、飲食店やカラオケの大きなビルを過ぎて間もなく、ガラス越しに雛人形が見える商店へやってきた。
②「つくだにとうなぎ 小松屋」
自分は人形に詳しくないが、町のひな祭りで人形と店の対比を見ることが好きだ。店には贈答用の佃煮を求めるお客が次々と来ていた
〝土用おひなまつり〟と錯覚する
歯科医院の人形はウィンドウ越しに見た。
③「田口高広歯科」
院内に白熊とは。歯科のサイトを見てみると独特だった。土浦の名物に違いない
④「お茶のせこ沢」
東京から来たと言ったら、お茶と菓子を頂いた
土浦の雛まつりでは各々の家に伝わる人形が飾られるらしい。周りの飾りはせこ沢さんの知人が作ったそうだ。自分が蒲田に住んでいると話すと、土浦から蒲田へ、手芸用品を買いに行く人がいるという。ユザワヤ本店だろうか。
⑤「霞ヶ浦のつくだ煮 箕輪名産店」
次はせこ沢さんから〝大きい人形がある〟と教わった箕輪名産店である。写真には表れていないが、確かに大きくて立派。十二単が見える部分だけ重なるのではなく、ちゃんと着ている
40センチくらいだろうか?
箕輪のご主人が言うには、雛人形の主流が八段飾りから内裏雛に移行した時代に、八段に見劣りしないように大きく作られたとのこと。保存や出し入れにずいぶん苦労しているそうだ
人形を2階の住居から1階の店舗へ運ぶのが大変で、業務用エレベーターにも入らない大きさらしい
駅から箕輪名産店までは290m4分の距離だが、土浦へ着いてから一時間が過ぎていた。ふるまい豚汁の時間だ。会場へ急ぐ
今日は豚汁の日
道に迷った
タッチの違うレトロ看板を持つ美容室
⑥「まちかど蔵 野村」
なんとか間に合い、豚汁を頂いた。具にさつま芋が入っていて、さすが干し芋で有名な茨城県だと思った。あとでスタッフに告げると、家庭では普通入れないらしい
手作りのたぬきの人形が並ぶ
隣の雛まつり番所では甘酒も頂いた。麹の粒がフワッモチッとして美味しかった。番所は交通安全の施設だから、酒粕を使用しない甘酒を提供している
ここで蓮根人形を見ることができた
「霞蓮雛人形」。名の通りれんこんの花や葉でできている。茶色い
重陽の節句も何か人形を飾ってお祝いしようと、特産のれんこんを使って生まれたそうだ
タニシを使った人形もあった。背中を丸くそろえて整然と並ぶ姿がたまらなく可愛い
〝「かすみ人形」〜愛好家の創意工夫により現在のような姿になりました〜ロマンただよう素朴な姿は、ふる里の情趣をそこはかとなく感じさせてなつかしく思われます〜〟
れんこんやタニシやら、細工人形の吉浜を彷彿する
番所のマダムが⑦「まちかど蔵 大徳」を案内してくれた。大徳は現在も続く呉服屋で、150年以上前に建てられた蔵は町の観光施設となっている
昔の着物裏地入れがかっこいい
大徳には人形がたくさん飾ってあった
マダムはあるお宅の雛人形を、町が引き取ることを断った、という話をしてくれた。先に箕輪の主人から、カビや虫食いから守り人形を保管する難しさを聞いていたので、大変さが伝わった
吊るし飾り以外にも手作りがたくさんある
ここまで見て来て、土浦の雛まつりは手作りが目立つなと思った
〝あなたは作るの?〟マダムからと、お茶のせこ沢さんからも尋ねられていた (作りません)
マダムと別れてから蔵の文化財や土産物を見ると13時半を過ぎていて、あと8軒は急いで回った。
⑧「天ぷら ほたて」
ほたての雛人形はお食事処の小上がりの席にあった。これは店の前にあったサルビアおじさん。〝サルビアの咲く頃に現れるおじさんです。好きな食べ物はしいたけ〟
⑨「中嶋康化粧品店」
夫婦と思われる二人に迎えられ、雛まつりの会話が一段落すると〝ちょっと試してみませんか〟と、シワ取りクリームを顔に塗ってもらった。化粧品以外にも、おもしろ傘を名物としていて、たくさん開いたり閉じたり見せてくれた。
⑩「中西はきもの店」
雛人形の他に錦絵、手鏡など、明治期から伝わる品が展示されていて、由緒ある店であると伺える
⑪「古布を愉しむ 松翠会」
手作り同好会のギャラリーとなっていて、吊るし飾りが空間いっぱいに。他のお客が、なぜ雛まつりでないモチーフなのか作り手へ尋ねていた(鬼とか)。〝毎年同じような物だと飽きるから〟と聞こえてきた。
⑫「しゃれたきもの 京屋呉服店」
やはり手作りの飾りがあって、〝あなたも作るの?〟と尋ねられた。こちらの人形は昔、日本橋の西川で購入したものだと聞いて、自分は西川の前の道をよく通ると話した。旅において、町人と共通の話題に至った時というのは大いに盛り上がる。
⑬「笹倉邸」
界隈の町人みんなが勧めてくれた一般参加のお宅。ピンポンして入る
個人宅がまるで博物館だった。江戸時代の人形などあって、笹倉さんが一つ一つ解説してくれたけれど覚えきれない。鑑賞のコメントとして自分は〝そうとうな女家系デスネ!〟と言ってしまい、少し的外れな気がした
立派な羽子板は〝最初の娘に買っちゃったからやめる訳にいかなくて〟と。次女三女と、今や孫にも及んでいる
土人形や調度品も。家の前には人形をしまうための大きな倉庫が建っていて、2Kの我が家くらいの広さがありそうだった
⑭「美術工芸品 ミナトヤ」
トロフィーとコラボとは珍しい
⑮「呉服の前野」
土浦出身キルターという前野芳江さんのパッチワーク展示もあった。土浦は作家を生む町らしい
⑯「長谷川商店」
店内に入るとすぐ、店主らしき女性にお手玉を渡されて〝できる?〟と言われた。2つだけならとやって見せたら、3つ回すコツを教えてくれて〝いい運動になるでしょ?〟と。町歩きも終盤のところ、リラックスできた。
それから昭和の数え歌や風習の話になり、店内を見渡したのはしばらく経ってのこと。
そこは土浦の中川政七商店だった
イメージ:中川政七商店HPより
中川政七商店は工芸品、民芸品をおしゃれに扱う有名店だ。長谷川さんの店内にも郷土玩具がいっぱいに可愛らしく展示されていた。店内撮影不可のため、土浦観光協会のブログを参考にしたい(2016年の記事)
店の2階には店主自身の手作り雑貨、人形、洋服などがあった。自分は土浦の雛まつりについて、手作りが際立っていると感じたことを伝えると〝毎年同じ雛人形だと飽きるでしょ?お客さんに毎年来てほしいから…〟とこたえた
長谷川さんの作品は全て古着や手ぬぐいの古布から作られている。昭和とか古いものへの愛があふれる素敵な方だった。(写真は交通安全番所より)
帰りにれんこん料理を食べるために、目的の店へ行くと臨時休業。スーパーでれんこんの天ぷらを買ったが、茨城県産だったので満足した
カレーコーナーが広い土浦
今回れんこんキーホルダーは買わなかった。金属製でずっしり重いのだ。輪切りのれんこんがメダルのようだった
京屋さんでストールを買った。偶然にもれんこん色をしていた
土浦の雛まつりは、町のみんなが親切で、また行きたいと思いました。
【追記】
休みだった福来亭へ後日、れんこん料理を食べに行った
みつけに来ました!
れんこん飲みだ!
れんこん唐揚げの贅沢な大きさ。「土浦ツェッペリンカレーコロッケ」にもれんこんが入っていて、延々にザクザクした
店のおばちゃんが〝覚えてるからまた来てね〟と言った。はっきり覚えていると言えるとは凄い(呑べえには無理だ)。本当に覚えてくれそうだな。れんこん缶バッジをもらった
次回はレンコンカレーつけめんにしよう