ひな祭りチャンス到来である。
何がチャンスかと言うと、2つの事をあげたい。1つは、一度にたくさんのひな人形を見るチャンス。2つめは、ふだん利用することのない商店と関わるチャンスだ。
近年は各地で町をあげてのひな祭りイベントが催されており、以下は昨年の祭りを巡ったもの
鴻巣 びっくりひな祭り - きっぷ2000円 酒300円
岩槻 まちかど雛めぐり - きっぷ2000円 酒300円
有松 福よせ雛 - きっぷ2000円 酒300円
そうして今回やって来たのは、群馬県高崎市の新町
駅前
新町ひなまつりは10年も前から開かれているそうだ。駅構内の人形に、ひなめぐりマップが添えてあった
新町のまつりは主に徒歩圏内の商店の飾りをめぐるようだ。駅を出るとすぐ、ひなめぐり参加店があった
まず訪れたのは、リブ化粧品店
自分はふだん化粧品を駅ビルなどで買うので、個人商店を見学するチャンスだ。扉を開き「すみません~おひなさま見せてください~」と声をかけた。やったことないけれど、きっとハロウィンとはこんな感じなんだろう
店内にはひな飾りが敷き詰められていた
化粧品はどこだ
人形と他のいろいろなものが飾られている。店のお姉さんの話によると、全て家主の私物で代々女子が誕生するごとに贈られた人形らしい。“これはおばあちゃんが生まれたときのものだから90年くらいになる”と聞いた
こちらのお宅には90才のおばあちゃんがいるのだな
自分が今までに行った町のまつりにはなかった、ガラスケースの人形。これは女の子が生まれた際に親戚から贈られるものらしい。対してひな人形は親から贈られるそうだ
店内には巨大まつぼっくりがたくさんあった。〝今メイン会場にいる、ここのあるじが毎年取りに行っている〟とのこと
ふと雛めぐりマップに、訪れた店をチェックする欄がないことに気がついた。各地の雛まつりイベントにはもれなくスタンプラリーが付いていたりするが、新町では2~3年前にやめたという。人形を見てもらいたい店側の思いとは裏腹に、スタンプの景品だけを目的にする客が目立ったからだそうだ
新町ひなまつりはたんなる客寄せイベントではなく人形を大事にしていることが伺えた。店にはご当地ペコちゃんもずらり並んでいる。〝あるじが好きで〟
一軒目からたくさんの話を聞かせてもらった。次にお姉さんお薦めの会場、商工会へ向かうと、一面赤いショウウィンドウが目を引いた
立派な御殿飾りが並んでいる。所蔵または寄贈と書かれた札と共に、町の皆の人形が飾られていた
○○区、○○様所蔵という書きかたに、そういえば自分の田舎は10区だったな……昔は地区民運動会とかあったな……と思い出した
これは商工会から数歩の公民館
人形は入口すぐのところで見終えたが、手洗いを借りるため奥へ進むと、ホワイトボードの「本日の催し」が見えた。雛めぐりマップに載っていたイベント参加グループの名がある。ここが控え室か、練習場だろうか。イベントの裏側を見て得した気分になった
次に訪れた金井洋品店の人形も、こちらの子(人形)ではないそうだ
雛飾りの漆の台に、レシートの替えが乗っている
たいこ焼きの「とみや」は、お菓子と雛人形がベストマッチ
宝飾メガネ時計の「ひうが」。これはここの子だろう。今どきの様相の人形から、お子さんは最近生まれたと推測される
ファッション&インテリアすみれ。“きょねんは町から8段飾りを借りてショウウィンドウに飾ったけど、今年は小さいものが届いてしまって店内に置いた…”そうだ。店の奥さんが申し訳なさそうに、手違いで小さいのだと何度も言った
ウィンドウに飾られるより、自分は店内に入れたから嬉しい
自分が東京からやって来て、出身は宮城と話すと震災の話に。息子さんが仲間と、この店いっぱいの支援物資を集め、震災3日後に自ら届けに行ったそうだ
凄い行動力だ。“コンビニでおにぎり買い込んで親戚がスタンドやってるからガソリン積んで…”と話す奥さん
被災地には二度向かい、炊き出しをして現地で群馬名物焼きまんじゅうを作ったらしい
これは酢屋製菓さん。名物はみそまんじゅう
他にも偶然故郷にまつわる話を聞いた。新町はかつて、自衛隊や紡績所へ勤めるために東北地方から移り住んだ者が多いそうだ。だからこの町の人は昔から、よそものに抵抗がないらしい
写真はすみれの奥さんの紹介で向かった純喫茶トムソン。古い人形と昔ながらの喫茶店とカレーの香りが独自なオリエンタルを生んでいる
次はメイン会場の行在所公園。マップによると新町駅から真っすぐ向かえば徒歩5分のはずだが、町人と話したり石仏に足を止めたりして、2時間かかった
ひなまつりスープだ
メイン会場ではひなまつりコンサートやバザーが開かれ、商工会女性部の方々は寒空のもと元気に、新町名物カツ丼や焼きまんじゅうを販売していた
先ほどすみれで聞いた話を参考に、だれか東北出身の方いますかと尋ねてみたら、〝たしか○○さんがそうよねえ〟と答えてもらえた。写真はぐんまちゃん。地元のおかげか、東京のゆるキャライベントよりリラックスしているように見える。隣は新町名物カリボーのキャラクター「カリ坊」
女性部の方に〝御朱印もらいに来たの?〟と言われた。唐突に何事かと思ったら、近くに御朱印が人気の神社があるらしい。めぐり会場になっていたので次の目的地に決めた
明治天皇新町行在所は140年前に天皇が泊まったところ。人形がびっしりと飾られていて迫力あるが、建物のやわらかい空気に包まれていた
メイン会場から例の於菊稲荷神社は1〜2分と、本当に近かった。新町は高崎市の飛び地なので町自体が2キロ四方と、小さいらしい
神社は新築で、賽銭箱向かいの扉はガラスだ。大きなお雛様とお内裏様と対面した
確かに御朱印を求める人が絶えず見えた。女性部の方は〝絵を描くような御朱印〟と言い、展示されていた新聞記事には「アートのような崩し字で…菊の字を白狐の尾に見立てている」と書かれていた
自分は御朱印をもらわなかったけれど、こて絵に感激し、撮影不可のためメモをとった。〝「龍の歯医者」明治9年に近隣の歯科医師が奉納した漆喰絵馬。当時の治療道具を知る上でも大変貴重な資料である〟
こて絵の他にも多くの絵馬などの文化財が展示されていて、宝物殿を拝観した気分になれた
於菊稲荷神社 - 於菊稲荷神社
その後はまつしま肉店へ進み、高崎名物オランダコロッケを揚げてもらった。チーズ入りでアツアツ
生肉+人形
この神殿は結婚式場かしらと思ったら、ガトーフェスタハラダ新本館店だ。東京でも買えるから、とあなどったが、中山道店には限定シューアイスがあり、買いそびれを後悔した
レジが行列だったのでサービスコーヒーだけもらって出た。ハラダ紙コップがレアー
ハラダ稲荷があった
これは河野石材店さん
新町ひなめぐりも終盤に、お米とお茶の店、浜名屋田辺商店へ。たしか人形は家のものと聞いた気がするが、ここまでの新町メモリーがいっぱいで覚えられない
左側のガラス戸の向こうは居間になっていて、テレビとコタツが見えた
京都や江戸雛に比べると顔がふっくらかしらと思っていたら、店のお母さんが群馬メーカー製と教えてくれた。昔はお茶箱に入れて、人形一式あったけど、蔵など建て替えるときに処分してしまったそうだ。建て替えといえば、於菊稲荷神社は建て替えで綺麗になったうえに、良い事があったらしい
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桜井識子さんというスピリチュアル界の有名人が於菊稲荷神社を訪ね、本に掲載し、小さな町が話題になったそうだ。お母さんが嬉しそうに本を広げ、“ほらここ”と指差す
お母さん曰く“昔はさびれてたのに”
話は変わり、お母さんに新町グルメを尋ねると、ハラダ、焼きまんじゅう、と教えてくれた。そしておもむろに“ちょっと待って”とガラス戸の向こうに消えると、中から〈…チン〉という音が鳴った
ふるまい焼きまんじゅうだ
ちょうど家にあったという焼きまんじゅうを温めてくれたのだ。まんじゅうはふかふかで甘じょっぱくて美味しかった。何気なく訪れた者をこんなにももてなしてくれるとは。申し訳なく思った自分はそばにあった小豆を買うことにした。
お母さんは“そんなのいいのよ”と言ったが買った。しかし実は自分は小豆を炊いたことがなく、小豆は難しいよ、と忠告される。そうしてまた、小豆の炊き方を聞くこととなった
これはなぎなた発祥地の碑。新町は絹糸紡績と群馬県ボーイスカウトと日本スリーデーマーチも発祥だ。あとハラダと、自分にとっては「初めての小豆の地」となった
雛まつり買い物券が集まったので最後にメイン会場へ戻り、福引きをすると雛まつりタオルが当たった。肌触りがやさしい。
まもなく駅に着くという時、リブ化粧品店の前で商工会女性部の方たちとすれ違った。自分が会釈をすると、〝また来てね〟と言われた
女性たちの中の誰かが、毎年あれを山へ取りに行ってるんだなあ
今回巡ったのはイベント参加店の一部だが、ひどいくらいの充実感だった
みんなの話が覚えられない。写真はスーパーフレッセイさん
新町、小豆の報告にまた行こう