職場のY田さんと旅することになった
この夏、自分用に2枚買った18きっぷのうちの2回分を、旅好きと聞いていた職場のY田さんへ譲った。聞くと偶然同じ日に名古屋へ行くそうだ。ではもしタイミングが合えば会おうとし、実際に一時を共に過ごすことになったのだが、思い返せば終始Y田さんを意識。まるでリモート二人旅であった
Y田さんとは出発の直前にLINEの交換をした。これまであまりプライベートな話をしたことがなく、当日の出発駅(住まい)や出発時間も打ち合わせしていない。ただ夜に暇だったら会おうと話していたが、時は早くに訪れたのだった
なお今旅の写真が少なかったため、一部別の日に訪れた時のものを使用している。冒頭のイメージ写真はイオン有松店。名古屋市の有松は過去に何度も訪れていて、絵になる風景が多い
朝10時、沼津のホームで合流
それぞれに出発した当日だが、早々に電車が止まってしまった。静岡県内で事故が起こったらしい。自分は富士で運転見合わせの知らせを聞いて、前進できないが戻ることはできたので、駅前が栄えている沼津まで戻り時間をつぶすことにした。Y田さんへ連絡すると、いま東田子の浦にいるとの返事だった
近くにいた
Y田さんはそのとき東田子の浦を散策していて、“駅の近くには何もない”と返ってきた
自分は沼津の町で趣味のがんもを買い集めるなど有意義に過ごした
Y田さん今ごろどうしてるかな…同名の看板に思い馳せる
沼津で1時間くらい過ごしただろうか。電車の運転再開が近づき駅へ戻った。するとホームにY田さんがいる。私服のY田さんだ。我々はいつもの職場とは違う「おはようございます」を交わす
夜に酒のテンションで親交を深める予定だったからたじろいだ
どうしよう。あとこんな時だけど、割引の期限が今日までのコンタクト屋をさっき沼津の街で見つけたからどうしよう。Y田さんと相談し、混雑を避けるためにも運転再開一本目は見送り、自分はコンタクト屋へ、Y田さんは一服できる場所へ向かうことにした。その後の待ち合わせはしなかった
コンタクトは店の人のすすめでアプリを利用し、割引券の他にアプリ特典でさらに買得となった。お気に入り店舗登録は銀座とした
これは有松絞り柄のガラス
買い物を終えて駅ビルの手洗いへ。ちなみに次の電車はいつ来るかわからないけれど、一服しに行ったY田さんはどう過ごしているだろう。と思ったらトイレの手前で会った
駅ビルの占い屋の辺りで会った
一日に偶然2回も出会うなんて。運命か。自分は緊張感を持ちつつも、何だか楽しくなってきたのであった。
二人で電車旅
我々は電車で隣同士に座っておしゃべりした。Y田さんは職場の先輩で、年は自分より一回り以上も下の女の子だ。聞くとパワースポットが好きらしく、今回の旅では名古屋の熱田神宮を見てひつまぶしを食べるそうだ。ユーモアがあり誕生日を当てるなどゲーム性を帯びた話もしてくれる。自分は話下手なのでY田さんを尊敬した
長いと呼ばれる静岡区間があっという間に過ぎた。写真は有松の甲冑
ところで自分は以前から島田のメンチカツを食べてみたいと思っていて、今回は電車トラブルのおかげで逆に営業時間にちょうどいい。自分は島田で降り、Y田さんは一直線に名古屋へ向かった
以前から気になっていた肉屋、チャーシューが名物のくわばらさん。店内には芸能人のサインがあって、きっとメンチも美味しいに違いない
だがメンチカツはなくコロッケを買った。メンチカツのない肉屋なんて…!残念がっていたら、くわばらさんの隣にY田さんと同じ名の看板を見つけて嬉しくなった
そしてコロッケも美味しかった
これは島田で見たマンホール。Y田さん、トーマスが好きでいつか大井川鉄道に乗りたいと言ってたな…
うなぎと毛ぬきの人
島田で電車を待つ間に先程のコロッケ1個と沼津のがんもを食べた。食べきれないぶんは車内で食べた。がんもは2パック、はんぺんフライも買っていた
写真は以前に食べたときのものだけど、こういう富士の名物、甘いがんもを探している
これは今回食べたけど上のより甘くない。しかしコロッケとがんもで腹いっぱいにしてしまった。今ごろY田さんはうなぎを食べているだろうか
自分も名古屋にやっと着き、まず包装用品のサトーイクへ毛抜きを買いに行った。ここの毛抜きは日本製で安くてよく抜けるのだ
Y田さんにも買おう。今ごろは熱田神宮にいるだろうか
自分はがんもやコロッケを食べて毛抜きを買ったらもう夕方をむかえた。これはまずい。名古屋らしいことをしなければ。名古屋の名店、上野屋に入った
とんやき上野屋。モチモチのサガリと、芯まで黒いおでんのこんにゃくが好きで先代の頃から食べに来ている
黒いし食感も独特なこんにゃく。とうふも美味しい
遅ればせながら名古屋を感じた
店を出て宿へチェックインし、Y田さんへ再会の伺いを立てた
今回泊まったナインアワーズは人気のおしゃれカプセルホテルだがこのご時世でフロアに客は自分だけだった。Y田さんも来たらいいのに
名古屋で二人飲み
聞くとY田さんはどこかで道に迷っていたものの、自分のところまで来てくれると言うので、みそカツののんき屋で待つことにした
東京の家の近くにのんき屋で修行した方の店があって、店名も同じくしている。でも東京では甘い名古屋味は人気ないから普通のやきとり屋をやってるんだって
Y田さんを待っている間、隣の男性客から“女性なのにビール大瓶とはツウだね”と言われた。確かに自分は女らしさに欠けているが、女性らしい酒とは何だろう
これはひな祭りのときの有松の飾り
少ししてやって来たY田さんは生ビールを注文した。
この旅3度目に会うY田さん。異郷のせいあり、もはや安心さえ感じた。また、付き合いたてのようなウキウキで、自分と離れていた間の話を早く聞きたかったが、まず隣のおじさんが話し出したのであった
おじさんは電車で来た我々に対して、自転車の素晴らしさを語った。Y田さんは上手に相づちをしていた。写真は今朝の沼津
おじさんの話をひとしきり聞いたところでドリンクを飲み干し店を出た。このあとどうしたらいいのだろう。自分なら名古屋の夜ははしご酒と決まっているが、Y田さんはきっとそんな人ではない。ひとまず近くの軽く一杯飲める店に入った
風ふう屋。名古屋のビックカメラ近くで酒350円の店
改めて乾杯し話を伺った。今日自分が電車でスーパーのがんもにかぶり付いていた頃…Y田さんはうなぎの蒲焼きと、白焼きをも食べたそうだ。少しずつのセットではなく2尾だ。小柄なY田さんのギャップと、うなぎへの熱意が素敵だと思った
自分はこのあと一人でもう一軒行ったけれど入ってみたら大阪風の店で、どて焼きをちびちび食べた
道に迷ったという件は、明日の着替えを買うために店へ行き、街を楽しむため地図を見ないで歩いたから。…無鉄砲さがかっこいい。自分はホテルなのに着替えもタオルも持ってきた
明日は水辺で遊ぶ予定らしく、無邪気でかわいい。写真は名古屋のアメンボマンホール
我々は風ふう屋で別れた。Y田さんのお話を聞き、有意義な一杯を過ごさせてもらった。この夜Y田さんはカラオケボックスへ泊まりに行った。
先を行くY田さん
翌日、自分は行くつもりだった所が定休日とわかり、急きょ武豊へ向かうことにした。武豊線は愛知県最古の路線で、町には味噌の醸造蔵が多い。着いてから知った
町のキャラクターはみそたろう
まず中定商店という醸造蔵に入った。風情ある味噌屋さんだ。そこで店員さんが話してくれたのだが、武豊の飲食店はどちらもコロナ禍で休業らしい。これから街歩きしようという自分は困ったが、かろうじて営業している店を教わったので向かおうとすると、なんと店員さんの車で送ってもらえることになった
中定商店は国の登録有形文化財である醸造用具を展示しているが、さっそく車が手配されたので見学していない
「自家用車でごめんなさいね」と店員さん
これは特別に嬉しいことであった。と言うのも昨夜、Y田さんから“車で送ってもらった話”を聞いたばかりだったのだ
スイっと到着できた味の蔵たけとよは道の駅のような施設
ある旅の最中に一人で山道を歩いていたら、通りがかった夫婦の車に乗せてもらったそうだ。そんなのすごい!と昨夜の自分は驚いたが、まさか同じようなことが起こるなんてやったよY田さん!
旅の者を乗せるとは、世の中優しい人が何人かいるものだな。ちなみに手洗いに武豊は太っ腹と書かれていたのはウエストサイズのこと
帰りは味噌の町を散歩して駅へ戻った。※この記事もあと少しで終わります
自分が武豊=知多の半島にいた午前その頃。Y田さんからメッセージが届いた。静岡県の三島からだった。Y田さんは既に三島湧水の散策を済ませ、三島コロッケを食し、次にうなぎを食べようとしていた
武豊を散歩していたらデイサービス「陽だまり」があった。醤油らしい名前だ
名古屋までせっかく来たからできるだけ居すわろうとした自分に対し、潔く関東へ戻ったY田さん。また、自分が帰りも肉や魚屋で買い食いしたのに対し、徹底してうなぎへこだわる信念を見せ付けられた
三河三谷の肉屋…焼津の魚屋…
三河三谷の小さな商店の230円の素朴なかき氷が美味しかった(音羽家のせんじ氷)
旅の最後は静岡の元気くんで注がれるままに飲んだ
後日、Y田さんから旅の終わりの話を聞いた。三島で食べるつもりだったうなぎはやめて、熱海の有名な海鮮料理店へ向かったそうだ。ここまでは普通のことだがさすがY田さん。道の途中で知らないご婦人から食事に誘われたらしい。婦人はY田さんの洋服を気に入り、一緒にごはんを食べたくなったそうだ(あのとき名古屋で買った着替だ)。つくづくY田さんは旅力のある人だと思った。(誘いは心に決めた店へ向かうため断った)。
終わりに
いつもは一人の18きっぷ旅。今回は二人で…というか、誰かを想いながらの旅も良いものだと思った。これはもちろん、最高の相手に恵まれたおかげであるが
ふだんなら見過ごしてしまいそうな喫茶店のショーケース。さんまだけど蒲焼のメニューが目に入って、何となく調べたら桶に乗った料理が水の流れで運ばれてくる変わった店のようだ。今度Y田さんに教えてあげよう。
(甘味処どんぐり/沼津)