きっぷ2000円 酒300円

18きっぷでぶらぶらしたり酒を飲んでいます。恥を書いて昇華する。

掛川 くず布とアンデルセン

 

ある旅の途中、静岡駅の売店でかっこいい財布を見た。それは「掛川くず布」という工芸品らしい。その場で欲しかったが、あらためて後日、掛川へ向かうことにした
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満を持して訪れた

 

 

ここがくず布の故郷、掛川。駅前には「スローライフの街」「掛川茶エンナーレ」などの言葉が掲げられている。今からこの街で何が起こるのか、期待が膨らむ。

 

 

先ずスーパーに入った
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ど旨い

 

 

様々な文化施設を差し置いて入ったけれどこれも観光。スーパーの名を「ウィタス138かけがわ」という。テナントなどの肉屋が静岡のチェーンであり、パン売場には「掛川アンデルセン」と表記されている。首都圏にあるパン屋のアンデルセンと系列なのだろうか?

 

 

パンを眺めているとスタッフのおじさんがやって来て、声をかけられた。

〝お楽しみ袋を待っているの?〟

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そんな楽しい袋、知らない

 

 

違う旨を伝え、掛川アンデルセンは地元に展開する店であることを伺った。おじさんは社長で、近くの店舗からお楽しみ袋を作りに来たそうだ
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近くというとスーパーから5分くらいの連雀店だろうか

かけがわ街なかイベント情報発信サイト 街ん中ナビ

 

 

お仕事中におしゃべりしてすみません、と言ったら社長は〝仕事じゃないよ。シール貼りに(袋作りに)来ただけ〟と言い、アンデルセンのことや、自身の子息は別の企業に勤めていること、今の日本経済のことなど話してくれた。

 

 

ひとしきりして、ところできみは?と聞かれた
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ええと、ただのパンずきです(写真は同静岡県内のクリタパンさんより)

 

 

日中に買い物かごも持たずスーパーをぶらぶらしている自分は不振だっただろう。東京から「掛川くず布」を見に来たことを告げると、社長はくず布のことを教えてくれた。

 

 

くずは葛だった
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掛川手織葛布ホームページ

 

 

自分はくずを、余りものの「くず」と勘違いしていた。裂織とかの仲間と考えていた。お恥ずかしい。静岡駅の売店表記がひらがなであったからだと信じたい
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これ。不揃いな感じがくずっぽいかと 

 

 

スーパーのパンコーナーで葛布の予習をさせて貰った。詳しいですね、と伺うと社長は〝地元の人なら皆知っている〟と言ったけれど、先述のサイトに「農学部出身の社長」と書かれていたのできっとそうなのだと思う。それから観光スポットなどを教わり、店をあとにした。社長ありがとう。

ウィタス138かけがわ|we+138Kakegawa

 

 


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路面店アンデルセンを訪れると、付近の塾の生徒らしい子たちが見えた。自分はパンでなくシュークリームを買ったが、クリームがいっぱいで美味しかった。あんパンのこしあんつぶあんのゴマの色が、一般的な店と逆な気がした。

 

 

今度こそ満を持して訪れた
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三軒ある織元のひとつ、掛川城のふもとにある小崎葛布工芸さん。店構えが上品である。戸を引くと玄関、売場は和室だった。

 

 

店のご主人は若輩の自分へも丁寧に接してくれた。初めに葛布ビデオを鑑賞し、二階の工房は自由に見学させてもらった
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階段を昇るとなんとも素敵な光景

 

 

温もり。初めて見るのに懐かしい感じ

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織機、紡がれた糸、染色された糸、たくさんの道具、ひとつひとつ一本一本に人の手がかかっている

 

 

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ビデオでお年寄りが葛を採取する姿を見た。取った葛を糸にする過程も織るのも大変。葛布を作る挿し絵がパンフレットにあったけれど、江戸くらいの様相で、この時代から制作の様子は変わっていないということだろう
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江戸どころか鎌倉時代からこんな感じかも

 

 

温もりの中にはたくさんの苦労がある
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傍らにバランスボール。従業員の方が休憩に使うのだろうか

 

 

二階の見学を終えて、店主と話しながら買い物。いろいろと欲しかったが葛布を知るきっかけとなった財布に決めた。なお自分は約20年の間、1~2年おきに西陣織会館で財布を買い換え続けていたので、今回のことは事件である
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長い間ありがとう西陣

 

 

財布の色を迷っていると、店主が似合う色を薦めてくれた。葛布は使い込むと良い風合いが出るそうだ。所々の「たま」が可愛い
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いつか落とし物でこちらを見かけたら、ご一報下さい

 

 

葛布は鎌倉時代頃からある工芸品なのに知名度が高くなく、明治維新や戦争を経て従事者が減ったそうだ。取引先は今、小崎葛布さんでは海外に多いらしい
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これは奥さんの友人が作ったというテープカッター

 

 

海外で葛布カーテンが人気とのこと。たしかに植物の野趣と手織りの繊細さ、素朴と気品。ジャパンブランドの形容詞がまるで当てはまる。

 

 

ところで自分が神戸のライブハウス帰りだと漏らすと、店主が興味を示してくれた。ジャンルは違えども音楽が好きで、きっかけは仕事でアメリカを訪れた時に逢った路上JAZZらしい
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葛布と音楽の話ができるとは幸せな時を過ごした

 

 

現時点で表だった情報ではないが、葛布界では国内の有名大学と大企業が組むプロジェクトが始動したそうだ。掛川に美術館がある資生堂とか

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当館のご案内|資生堂 アートハウス | 資生堂グループ企業情報サイト

 

 

今後の掛川が大きく変わるかもしれない。動向に注目だ

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スローな街がどうなるか

 

 

http://www.shizufan.jp/netamap/seibu/43366/:小崎葛布さんについて丁寧に取材されている記事

 

 


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葛布見学を終えて掛川城へ向かったが、既に閉館。話は混線するがこの日の午前、自分は愛知県の岡崎にいた。味噌蔵を見学した後、きっと時間がなくなるだろうと岡崎城はやめておいたけれど掛川も間に合わなかった。2城も得ず

 

 

 
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〈続く〉